小児はりとは、金属でできた可愛らしいスプーンのようなもので、お子さんの体を撫でたりこすったりして、気の流れを整える術のことを言います。
よく、子供が夜泣きをするのは“疳の虫”がさせるとされ、昔は民間の「虫切り」ができる人の所に通って、虫切りをした。などの話も伝え残っています。
疳の虫とは、どんな虫でしょうね。虫切りをされると、指から白い糸のようなものが出てくるそうです。ふわふわとしたとても柔らかな繊維のようなものだそうです。
私も一度、虫切りをしてもらいたいと思っています。(東かがわに、虫切りができる方がいらっしゃるそうですよ。)
さて、小児はりですが、私が通った鍼灸学校では、年に一度文化祭が行われていました。
一年生は、焼きそばを。
二年生は、小児はり。
三年生は、耳鍼と、上級生になるほど、なんとなく鍼灸師の責任に溢れるように思いますね!(一年生に限っては、焼きそばですからね。鍼灸と何ちゃ関係ないですからね。笑。それでも、私の学年の焼きそばはおいしいと評判でした。実は、もと本職の方がいたのです。笑)
その時には、私達はまだ本当の鍼を使って人に施術することができませんでしたので、使用するのはスプーンでした。みなさんがいつもカレーを食べる時に使うあのカレースプーンを子供のお腹にあて、“の”の字に流してみたり、下腹部にはドライヤーを当てて温かくしたり、お母さんにお子さんを抱っこしてもらいながら、私達学生がスプーンを使ってお子さんの背中を撫でたりしたのです。
たくさんの方が来てくれました。
中には、おねしょに困っているんです。と、年長さんぐらいのお子さんを連れて恥ずかしそうに足を運んでくださったお母さんもいました。
全然恥ずかしくなんてありません!
だって、こどもなんですから!
失敗して当然です!
そんなお母さんは、とても熱心です。丁寧に順番をメモされ、次はなんでしたか?強さはどのぐらいですか?たくさんの質問をされます。
それほど、お子さんのおねしょに心をくだいていらっしゃるのでしょう。
実はおねしょに関しては、私の息子もそうでしたので、心配になる気持ちが本当によくわかります。
そして、きっと他のだれも書かないだろうと思うので私が書きますが…おねしょはその後の臭いがひどいのです。
晴れた日は外にお布団を干せばいいのですが、フルで働いているお母さんなら帰宅が遅いとお布団が冷たくなるので干せない方もいらっしゃるかもしれません。
雨の日におねしょされると悲惨です。乾かそうと乾燥してみても臭いが部屋中に充満しますので、イライラしていなくても、イライラしてきます。
私はひどい母親で、おねしょをした場所に子ども自身にアイロンをかけさせていました。そうすると、嫌になっておねしょもしなくなるかな。など、身勝手な思いで子供に命令していました。
おねしょをして困るのは、誰ですか?
お母さんです。
子どもは困りません。恥ずかしいな。冷たいな。と悲しく思うことはあっても、困りはしません。そういえば、ドラえもんに出てくるのび太君も、あの年になるまでおねしょをしてお母さんに怒られていましたね。だからでしょうか。私には、おねしょ=怒る。これが、しつけのルールのようになってしまっていました。
子育て中は、色々と感情がわからなくなることが多々あります。そんな時は、自分がおねしょをしたらどうされたいか。を考えたらよいと思います。
まず、ある朝、みなさんがお布団の中でおねしょをしたとします。
こそっと起きてきますね。
そしてお母さんにこう言うのではないでしょうか。
「お母さん。おねしょしたみたい。」
え…
きっとお母さんはびっくりなさるでしょう。
お母さんは朝ごはんの準備中か洗濯を干そうとしている所かもしれません。
テレビコマーシャルのように、優雅にコーヒーを飲んで座っているお母さんなんてめったにいませんからね。
そして、みなさんならどんな風に言われたいでしょうか。
A「えええ!うそでしょう!おねしょしたの!(こそっと言ったのに、ここで家族みんなにおねしょしたことがバレます。)どうすんの!(この発言は、本当はパパの登場を期待するものですがパパは気付かず、いつものテレビをにやにやしながら見ています。)もう、しょうがないじゃないの!布団干さなきゃ!ただでさえ忙しいのに、なんで今日に限っておねしょするの。(忙しいのは今日に限ったわけではありませんが、“今日に限って”という言葉は何となく相手にダメージを与える力があるように思います)」
B「えええ!おねしょしたん。(もちろん小声です。家族からその子を守るようにみんなには背中を向けるとよりベター。)困ったね。(これはつい、言うてしまう…)今、冷たいやろ。服変えないかんね。(AとBの大きな違いは、子供を心配している言葉が入るかどうかです。)どうしようか。お布団、干した方がいいかな。どのぐらい濡れたん。」などです。
ふうぅぅぅぅ。
理想やねぇ。笑
結局、大事なのは、お母さんとの絆です。
お母さんは大変。
どんなことも受け止めないかんから。
お母さんがここでおしっこを汚いものとして扱ったら、自分も汚いものとして扱われているように思うから、ここはお母さんの踏ん張りどころなんです。
で、小児はりですが(いつも横道にそれてしまう…)
結局のところ、順番や方法は何でもいいんです。
お母さんが、お子さんを抱っこしたりお膝の上にのせて、「これはどう?気持ちいい?」なんて一生懸命してくれる。それが大事なんです。そなんいうて学校のレポートに書いていい点もらいましたから、正しいと思います。笑
金属は、体の熱を逃がすので、瀉法に。
ドライヤーは、体に熱を送るので、補法。
背中は上から下へ流すように。
お腹は腸の向きに合わせて動かし、おねしょの子供にはドライヤーで下腹部を温めてやる。
まれに、額に青筋がたつ子がいますが(私の同級生の22歳の男性も時々額に青筋が立ちます。そんな時は、あー赤ちゃんと一緒だなあ。なんて思います。)そんな時はスプーンの背中でトントン叩いてやります。
手技は色々ありますし、子供期に大切なツボもあります。
ですが、何より大切なのは前述したようにお母さんが自分のために時間を使ってくれて、その時は自分の事だけを見てくれている。そう感じさせることが大切です。
また、小児はりについて目にした文献の中に(出典元を覚えておらず、申し訳ありません。たぶん、学校に昔の先輩から手書きで受け継がれてきた資料の中にあった文言だと思います。)『子供は、今世の体に対応できていないので、どの様に動かしてよいかわからず、流れが乱れやすい。』とありました。
それを読んで、ヨーガの教えも入っている私は妙に納得したのです。
ヨーガでは、“この体は今世での器(家)であり、魂(心)が主人である。”との言葉があります。
子どもは、今世の体(器)に引っ越してきたばかりで、なにも馴染めていません。どうやって感情を伝えたらよいかもわかならいし、どうしやっておしっこをとめたらよいかもわからないのです。そりゃあ、イライラもしますねえ。噛みつきたくもなります。
どうやって表現したらいいのかわからないんですから。
子供は精一杯叫んでます。
「お母さん!どうしたらいいの!わからないよ!」
そんな時、お母さんがやさしくトントンと子どもの体を撫でてあげることで子供も落ち着きながらその体に対応しているのではないかと思います。
小児はりは、とにかくまやかしです。
だって、カレースプーンですよ…(小声)
ですが、そのまやかしこそが、鍼の真髄なのだと思います。
母親の全力のまやかしは、どんな力より勝る。
私はそう信じています。