体のむくみを気にする女性イメージ

今日はむくみについて、考えてみたいと思います。
2022年の2月から3月にかけて、私はひどく体がむくみ、それはそれは辛い思いをしたことがありました。
たかが、むくみです。

むくみなんて、みんな大なり小なり経験があるし、45歳も過ぎると、ああ、代謝が落ちたのね。なんて片付けられるのですが、当の本人はとにかくしんどい。

辛くて辛くて、どうにかしなければと思うのですが、今までより体が重いので、ますます動くのがしんどくて動けないのです。(意思が弱いと言われるかもしれないのですが…)

みなさんにも、むくみが辛いという方はいらっしゃいませんか。
当院においでいただいた方の中にも、むくみが辛くて。とおっしゃる方がいらっしゃいました。
わかります。
でも、周りからは「食べ過ぎでしょ。」「運動すれば。」「年だから。」
と言われるばかりです。
それができたら鍼灸院には来ませんよねぇ…
悲しい。
とにかく、変わっていく体のことを言われるのは、悲しいし、情けない。
それだけです。

たかが、むくみ。
されど、むくみ。

そんなむくみについて、今日は東洋医学的観点からの考察と、むくみに至る西洋医学的な機序を考えながら、当院が取り入れている長野式治療ではどのように対応しているか。をご紹介したいと思います。

東洋医学では、むくみのことを“水腫”といったり“水気”といったりします。
また、東洋医学では体内の水分のことを津液と呼び、津液は“脾”、“肺”、“腎”が関係すると言われています。(この脾、肺、腎は西洋医学の脾臓、肺、腎臓とは捉え方が違います。)
一言でむくみと言っても、簡単ではなさそうですね。

一方、西洋医学的なむくみ(浮腫)とはどのような機序でおこるものと、捉えられているでしょう。

浮腫は、細胞と細胞の間の組織液量(間質液量)が増加して起こるとされています。
人間の約60%は水分(体液)であることは知られていますが、このうちの約2/3は細胞内に、残りの約1/3は細胞外にあります。
細胞外にある体液は、その1/4が血管の中にあり、残り3/4は組織間質に存在します。
体重が50㎏の人で考えると、約7.5㎏の体液が組織間質にあると考えられます。

よく、「水、飲んだだけで太るんや。」という話を聞きますが、体重の10%くらいまでは体液の貯留が体重増加の原因となる場合もあります。

私たちの体は本当によくできています。
細胞と細胞の間を満たしている組織液は、毛細血管から吸収され静脈へ流れ、心臓に返ります。心臓から肺へ送り出された血液は老廃物の交換がなされ、酸素を多く含んだ動脈血となって心臓から全身へ運ばれているのですが、毛細血管で吸収されなかった一部(約10%)の組織液はリンパ液としてリンパ管に吸収されます。

これら組織液が回収能力以上に体に貯留する状態を水腫といい、皮下に貯留する状態が浮腫とされています。

血管の血漿と組織間液との間には約束事があり、動静脈の圧、毛細血管の圧、タンパク質の量などによって、水分の移動が行われています。

では、浮腫になる原因の主な疾患としてはどのようなものがあるでしょうか。

全身性浮腫
心原性浮腫 うっ血性心不全
肝性浮腫 肝硬変
腎性浮腫 糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、腎不全
内分泌性浮腫 甲状腺機能低下症、月経前浮腫、インスリン浮腫
薬物性浮腫 女性ホルモン(経口避妊薬)、血管拡張薬、抗炎症薬
低栄養性浮腫 飢餓、蛋白漏出性胃腸症、脚気
妊娠 正常妊娠、妊娠高血圧症候群
特発性浮腫
局所性浮腫
リンパ性浮腫 象皮病、悪性腫瘍リンパ節転移
静脈性浮腫 静脈瘤、上大静脈症候群、静脈血栓症
動静脈瘻
血管神経性浮腫 遺伝性(クインケ浮腫)、非遺伝性
炎症アレルギー

単にむくみといっても、たくさんの病気が考えられるのがわかります。

東洋医学で考えるむくみも、同じです。
むくみ一つの症状をとっても、その体に起こっていることは、たくさんの臓器や器官が関係し、むくみといった状態を作り出しているのです。

私が勉強している長野先生の治療法の中には、水分代謝促進法というのがあります。
長野先生の治療では、

①腎性浮腫
②心原性浮腫
③肝臓性浮腫
④アレルギー性浮腫
⑤血管運動神経失調による浮腫
⑥唾液の不足、唾液の出過ぎ、涙目など
⑦各関節水腫など

にわけ、治療法を変えていらっしゃいます。

血管の運動は、橋~延髄の網様体に存在している循環器系の中枢から全身の血管へ通じる収縮性交感神経のインパルス信号で働いており、長野先生は脊髄側角交感神経節へのアプローチを試みる観点から治療法にも工夫をされています。
期待される効果としては、

・上眼瞼のむくみ
・顔面のむくみ
・利尿効果を高め尿の排泄を促す
・足のむくみ
・下肢倦怠
・腹水の減少
・全身的なむくみなど
・局所的なむくみ(クインケ浮腫)など

また、津液を司る腎は耳に関係するとされていることから

・外耳炎
・中耳炎
・耳漏
・耳閉
・耳鳴りなど

の耳疾患にも功を奏するとされています。
奥が深いですね。

長野式では、むくんでいるからこのツボね。とは考えません。
患者様お一人お一人の、その症状に至るまでの背景には多くの経過があり、それぞれの時間があるからです。

治療は、その方その方に応じた選穴(ツボ)で、鍼の刺し方(補法、瀉法)、技法が違います。

むくみでお悩みの方、一度長野式の鍼を受けてみてください。

みなさんの体が当院の鍼を受け入れてくれて、自ら動きだし、この水分は私にはいらないわ。と言えるようになったら素敵だな。と思っています。

一度、柿の木レディースこども鍼灸院の鍼を受けにおいで下さいね。

むくんだ体をあーかな。こーかな。と一緒に悩みながら考えてまいりましょう。

参考文献

【臨床医学総論】第2版 2019年1月10日第2版第11刷発行 編集:公益社団法人東洋療法学校協会、著者:奈良信夫、発行所:医歯薬出版株式会社

【解剖学】第2版 2018年1月10日第2版第13刷発行 編集:公益社団法人東洋療法学校協会、著者:河野邦夫、伊藤隆造、坂本裕和ほか、発行所:医歯薬出版株式会社

【鍼灸臨床わが三十年の軌跡 ~三十万症例を基盤とした東西両医学融合への試み~】平成29年12月20日第15刷発行、著者:長野潔、発行所:(株)医道の日本社